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前川 修
神戸大学大学院人文学研究科 教授

@研究内容
 私は19世紀以降の視覚文化論、特に写真および映画論を中心に研究を進めてきました。
 第一に、ステレオスコープやパノラマの知覚経験の両義性、スライド投影やその運動化、あるいはヴァナキュラー写真の製作と流通など、写真と、写真と結びつく様々な視覚装置との関係を多面的に考察し、なおかつ遺影や心霊写真、記念写真や証明写真など、写真の様々な用法を検討することで、広く映像によって同定される知覚/記憶の考古学を写真論として展開しています。また、これと同時に、第二次大戦後に展開されてきた写真の系譜を、写真としての芸術、芸術としての写真、マスメディアとしての写真への分岐という観点から跡づけ、写真メディアが孕む間メディア的な側面を前景化する作業を続行中です。さらには「写真的なもの」という概念のもとに、デジタル以降の写真の現在についても検討を進めています。「写真的なもの」とは、ヴィデオ、TV、映画という複数のメディウムの間に位置し、パソコンや携帯の画面上で自己差異化や分岐を繰り広げる相互参照運動に貫かれた画像であり、このヴァナキュラー的な、横断性や流動性や越境性に満ちた写真画像をポスト・メディア論的枠組みから捉えなおすことが現在の研究の中心です。

@サブカルチャーとの接点
 昨年度開催のメディア芸術コンベンション(「『メディア芸術』の地域性と普遍性―“クールジャパン”を越えて―」平成23年2/12)において、現在のサブカルチャーとメディア芸術の関係を焦点化する国際会議に参加し、写真メディアを軸に「メディア/芸術としての写真?」という発表を行いました。ポスト・メディア的状況において写真を含めた映像の生産と受容が、高級芸術と枠づけられるような限定された実践ではなく、むしろ写真的なものを経由した他のジャンルとのメディア間での流動的で横断的なコミュニケーションとして理解すべきことを主張しました。また、高級/大衆文化双方に由来する過去と現在のあらゆる映像をレパートリーとして二次制作素材にしてしまう「ユーザー生成コンテンツ」の両義性、そして複数のメディウムがアマルガムになった、感情的反応を誘発する断片的アイコンの集積としての視覚的制作物となど、いくつかの徴候も明らかにしました。もちろん、この徴候は写真に限定される特徴ではありません。同様にサブカルチャーに属す他のメディア、映画/ヴィデオ/マンガも同様の過程をたどっていると言えるでしょう。すでに発表した心霊写真論やJホラー論で部分的に明らかにしてきましたが、これら視覚的制作物も間メディア的制作物であり、情動的コミュニケーションのツールでもあります。現在このような観点からサブカルチャーとしてのJホラーおよび恐怖マンガの伝播と変容について論稿を準備中です。

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