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ジャクリーヌ・ベルント
京都精華大学大学院マンガ研究科 教授
国際マンガ研究センター 副センター長

@研究内容
 芸術学/美学および(日欧の)比較文化論といった視点からマンガ研究に携わってきたが、特に「マンガと芸術」の関係に焦点を当てている。その際、「芸術」を主に近代以降の制度と言説として捉え、それがサブカルチャーなどの共同体を超えてもつ社会的で、しかも社会批評的な役割を追究する。慣習的でない表現形式が慣習的でない意味内容へと導くという西洋近代的「芸術」は、独特な近代化過程を成し遂げてきた日本においては位置づけが異なり、1990年代以降のマンガ文化には見当たりにくい。そして、こうしたマンガ文化はもはや日本に限らないものである。つまり、非慣習性による批評性を特徴としてきたモダンな「芸術」と比べて、世界中の若者に歓迎されつつある「マンガ」は、共通言語によるコミュニティ作りを中心に据えた、情動的あるいは脱批評的文化だと言える。しかし、2011年3月11日以来、大規模な「社会」との関係よりも、一方でファン同士の諸共同体、他方で業界といった視点を重視してきたマンガ研究もその方向性を反省することが余儀なくされてきた。「マンガ」をもって「芸術」を、そして「芸術」をもって「マンガ」を考え直すことはその一環をなす。具体的には「マンガ芸術論」の名において、ミュージアムにおけるマンガや村上隆などの現代美術家から、1990年代以降、日本で姿を消してしまったマンガのメジャーとマイナー、またジャンルごとのマンガと「グラフィック・ノベル」に至るまで論考している。現在、「美術フォーラム21』誌のために「漫画とマンガ、そして芸術」についての特集(2011年末発行予定)を編集したり、文化庁メディア芸術賞のマンガ部門をめぐる活動に参加したりする。

@サブカルチャーとの接点
 「マンガ芸術論」は、本研究事業が追求する「日本」と「サブカルチャー」を避けることができず、むしろ有力な言説として積極的に直視する必要がある。19世紀末、日本の芸術を対象とした異国趣味の延長線にあるかのように、近年、日本マンガの普及は「日本」やその「美」へと還元される場合が少なくない。それがアジアよりも欧米、特にフランスに見当たることは言うまでもないだろうが、マンガ読者が「日本」への憧れを通して如何なる環境の下に、何を得られるかが注目されるべきである。一方、日本において下位文化ではなくなってきたマンガを日本語で「サブカルチャー」と称することによって如何なる共示的意味合いが活かされるのか、また、それを通して国内外の相違だけでなく、「芸術」との線引きが如何に主張されているかも注目される。異文化における「マンガ」の地位やその「芸術」との関連づけ、さらに「サブカルチャー」に対する態度を比較論的に追究しながら、マンガと「国民国家」という意味での日本の関係を再検討している。またそれを踏まえた上で、マンガ研究がどれほど日本研究を必要とするか、逆に日本研究がマンガ研究をどれほど必要とするかについて国際学術会議などで交流し、この交流を京都精華大学国際マンガ研究センターによる学術的ネットワーク作りと絡み合わせることを志す。

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