当日の様子CONTENTS

 滋賀県立大学 細馬宏道先生
細馬先生
 2011年3月17日(木)15:00より、神戸大学文学部社会調査室において、講師を招いての講演会が催された。

 滋賀県立大学の細馬宏通先生には、「『蒸気船ウィリー』を捉え直す――ミニーはなぜミッキーのもとにウクレレを届けるか?」というテーマでお話しいただいた。まず実際に「蒸気船ウィリー」というアニメ動画を視聴し、その後、この1920年代後半のディズニーアニメがどのような背景をもって構成されているか、という展開となった。

 背景の1つとして挙げられるのは、当時のアメリカではサウンドフィルムがまだ「トーキー」と言われていたこととも関連して、音(声)と口の動き、およびそれに伴う身体の動きが合致していること、そのリアリティが追及されていたということである。例えばジャズシンガーやボードビリアンも、口の周りを白く塗って口の動きを強調するという、そんな時代であった。そして事実、「ウィリー」の劇中では、登場者が発する音(声)と口の開閉、およびブレスをする際の体の動きが、正確に合わされている。

 しかし、そのような背景だけからこのアニメを解釈するのは一面的である。例えば、喜劇俳優バスター・キートンの映画に「蒸気船ビル」があるが、「ウィリー」には、そのタイトルやアメリカ的なプロットなどからの影響が強く見られる。また、「ビル」に登場する重要な小道具としてウクレレ(音楽)があるが、最初は軟派者の息子の象徴として扱われ、破壊までされるこのウクレレが、途中には、相容れなかった蒸気船乗りの父親との間を修復する重要な働きをする。そして「ウィリー」においても、やはりウクレレが重要な役割を果たすのである。さらに、両作品に流れる音楽「スティムボート・ビル」は、当時は誰でも知っている流行歌であり、それは蒸気船レースにおける事故のことを内容とした歌だった。近代映画には「事故もの」が多かったが、「ウィリー」はそのような事情をもアニメであてこするかのような意味を持っていたのである。

 このようにして、「蒸気船ウィリー」の中に込められている様々な意味を提示していただいた後、活発な質疑応答が行われた。その詳細は省くが、出席者にとって非常に有意義な時間をすごせたことは間違いない。(文責:大久保)